勢いはいつまで?白金市場のこれからを考える

 6月上旬に一時的に上昇場面を描きながらも、それ以外の期間は1,000ドルを下回る値位置で推移する場面が見られていたNY白金市場は、6月下旬以降に一気に値位置を切り上げ、中心限月である10月限は、現地7月12日の取引で1,111.90ドルの高値を付けました。  その後は修正が入って値位置を落として取引を終えているとはいえ、終値は1,097.90ドルと1,100ドル近辺を維持しています。また、NY白金の価格が1,100ドルを突破するのは、昨年6月以降と、実に1年1か月ぶりのこととなります。  さらに6月28日の終値が980.60ドルで、わずか8営業日でおよそ120ドルの上げ幅を記録したことを振り返ると、いかに今回の上げ相場が急激なものだったかが分かります。 ちなみに、今年は5月3日にも1,100ドルに迫る1,092.3ドルまで上値を伸ばしています。ただ、この時は、今回と同じように120ドル程度の上げ幅を記録する起点になると考えられるのが現地4月8日の取引とすると、18営業日かけての達成となっていました。 このように今回、白金価格が短期間で大きな上げ幅を達成することが出来た主因と考えられるのが、金価格との比価です。 NY金は今週に入ってから反落場面を演じていますが、それでも1,340ドル前後の値位置を維持しています。すでに知られているように、NY金は6月23日に行われた英国でのEU離脱か残留かを巡る国民投票の結果、離脱派が勝利して以降、EU経済に対する見通しの不透明感から安全な投資先としての需要が急増した結果、大幅高場面を演じています。 現在もその余波は続いており、米国での追加利上げの可能性に対する意識が再び高まりつつあるとはいえ、金ETF残高の拡大傾向が示すように、逃避買い需要には根強いものが見られています。 一方の白金は金に比べて安全な投資先としての役割が限定的であることから、英国の国民投票の結果を受けても価格がすぐに上昇することはありませんでした。しかしながら、その一方で金価格が急伸し、金価格との価格差が大幅に拡大したことをうけ、金価格の急伸に遅れる形で上値を追う足取りを開始しているのです。 年初からの金価格と白金価格の価格差を振り返ってみると、年初となる現地1月4日時点の値開きは190.70ドルでした。その後は追加利上げ観測が後退したことで金価格が上昇する一方で、白金価格が落ち込んだことから、値開きは3月3日には315.50ドルまで拡大しています。 拡大した値開きはその後、収縮に向かいますが、英国での国民投票直後となる6月27日には344ドルまで拡大したのです。それが、7月12日時点では237.40ドルまで縮小しました。つまり、ここ最近の白金価格の上昇は、金価格が高止まりするなかで急伸することにより、金価格と白金価格の値開きの収縮が図られた動きだったと考えられるのです。 すでに値開きが100ドル以上縮小したことで、金価格と白金価格の価格差是正の動きは終了に近づいていると見られます。現地7月12日の取引で白金が反落場面を演じたのも、値開きを適正な水準まで修正する動きが終了したことを示唆する動きと見られます。 それでは、これからの白金価格はどのように推移すると考えられるでしょうか?一つの注目点として挙げられるのが、この値開き是正の動きが一段落しつつあるなかで浮上してきた南アフリカでの労使交渉でしょう。 南アフリカでは白金生産業者側と労働組合側での賃金引き上げを巡る労使交渉が開始されています。白金の需給にタイト感が強かった時期には、労使交渉が分裂に終わった場合は長期ストによる供給不足が懸念されて白金価格が大きく上昇する場面も見られました。 しかしながら、今年に関しては労使交渉自体が白金価格に与える影響は限られていると考えています。というのも、これまで労使交渉が暗礁に乗り上げ、労働者によるストが実施されて鉱山生産量が減少しても、リサイクルからの生産で供給が賄われる結果、需給のタイト感が払しょくされるという傾向が続いているからです。 また、需要面においても主要消費地域であるEU経済の回復見通しが定かとならない限りは需要拡大を期待するのは難しいでしょう。 つまり、現在の白金の需給状況は値動きを左右するほどの影響力には乏しい状態にあると言えます。それでも価格が推移するためには何らかの拠り所が必要となり、これが金市場との連動性に対する意識の高まりを促しているのです。 すでに、金との値開きが是正に向かった以上、白金価格がこれ以上の上値を目指すのは、南アフリカの労使交渉によってよほどのサプライズが浮上するか、金価格がさらに上昇するなどの新たな要因が必要でしょう。それまでは金価格と適度な値開きを保ちつつ、現在の水準での高下が続くことになると予想されます。 【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社日本先物情報ネットワークに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社日本先物情報ネットワークの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

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