9月利上げは無いにしても、12月はまだ十分に可能性を残す内容ではある

 きょうのNY為替市場はドル買いが優勢となった。朝方発表になった8月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことをきっかけにドル買いが強まっている。8月のCPIはエネルギー・食品を除いたコア指数で前年比2.3%となり、FRBも無視できない数字と思われる。9月利上げは無いにしても、12月はまだ十分に可能性を残す内容ではある。

 ドル円は来週の日銀決定会合を巡って思惑が錯綜する中、一時101.75付近まで下落していた。しかし、CPIが予想を上回ったことでドル買いが優勢となり、102円台に戻している。ただ、全体的には方向感のない展開が続いており、来週の日銀決定会合やFOMCといった重要イベントを見極めたいムードが強い。

 日銀については、マイナス金利拡大の有無や国債購入の柔軟化、ETFの購入中止まで様々な憶測が流れている。黒田総裁が発表する包括的検証がどのような内容になるのか、市場は全く見通しがつかないようだ。そもそも、日銀内で意見がわかれている模様。ただ、どのような結果であっても、よほど緩和に積極的でない限り円高の反応になるとの見方も多い。

 きょうは辛うじて21日線は支持されたものの、10日線と21日線のデットクロスが示現しそうな気配で、ドル円の上値は重い。

 ユーロが軟調。ユーロドルは強いサポートとなっていた100日線を一気にブレイクし、下放れの雰囲気が強まっている。1.1145付近に来ている200日線の水準が意識される展開。

 ユーロ円も一本調子の下げとなり、一時113円台に下落する場面も見られた。きょうの下げで21日線をブレイクしてきており、8月以降の反転相場が終わりそうな気配が出てきている。9月に入って114円は割り込むものの、113円台に入ると買戻しも入り、114円台は維持されてきた。今回は完全にブレイクしてしまうか注目される。もし、完全にブレイクするようであれば、8月中旬につけた安値112円台前半の水準を再び視野に入れる可能性も高まる。

 ポンドの売りが目立っている。対ドルのみならず、対ユーロ、円でも下落。ポンドドルは1.30を一時割り込み、ポンド円も132円台に下落する場面が見られた。一部報道で、ハモンド英財務相はEU離脱によりEU単一市場へのアクセスを断念する用意があると伝わったことがポンド売りを加速させている。

 ドイツをはじめ、EU側は英国に対して、EU単一市場へのアクセスを継続したければ、移民を受け入れることが条件としていた。移民規制は英国民投票の最大のテーマであり、受け入れてしまえば国民投票を実施し、EU離脱を選択した意味が無くなる。

 一方で、人、モノ、資本、サービスが自由に移動ができるEU単一市場へのアクセスができなくなれば、英経済にとっては打撃となろう。特に金融機関からは、アクセス不可になれば、英国からEUに金融商品を自由に販売できなくなることから、人員を英シティからEU内に移動せざるを得なくなるとの声も強く出ている。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美

[紹介元] 為替市場レビュー | Klug クルーク 【東京市場】方向性に欠ける展開、ドル円は102円台前半