海外FX業者の中にはもともと金融業者としてライセンスを取得した国、もしくは事業登記を行った国以外から事業オペレーションを行う業者がいます。これを「オフショア法人」といいます。
オフショアとは、直訳すると「海岸線の外側」という意味があり、企業実態とは別の第三国に会社を設立しているもののことを表しています。
どうしてこんな法人がいるのか?と疑問に思う方が多いかと思いますが、主に2つの理由が考えられます。
- サーバーの管理を始めとする、FX業者の事業スキームをできるだけ賃金などのコストの安いところに持っていくことで、トータルの事業費を抑えようとするケース
- 実際のオペレーションとは別に税金対策だけの為に「ペーパーカンパニー」を設置しているケース
このあたりの話を聞くと、なんだかインチキくさいと思われる方も多いと思いますが「節税という点では合法的」なものになり、どこにも違法性はない事業といえます。
メリットを活かすためのオフシェア法人
意外に思われるかもしれませんが、こうした「オフショア利用」というのは、金融業界に限らずあらゆる業界で進んでいるのです。
たとえばパソコンの業界などでは、ほとんどの日本人向けのコールセンターは「大連」にあって中国人スタッフが日本語で対応するなどというのも当たり前です。
また、ハイテク系の企業では経理処理関連をオフショアにアウトソースして、中国やインドで行うなどというのもざらにあるのです。
FX取引は典型的なインターネットビジネスですから、オペレーションコストの安いところに本拠地を置いて、事業を行うことになるため、登録やライセンスをもっている国以外での運用をすることは十分にありえます。
さらに、こうしたオフショア法人を置いた場合、自国での取引は認めない代わりに国外から獲得した利益は無税にするという、いわゆる「タックスヘブン」の国もある為、金融の最先端を走る海外FX業者はこうしたメリットを活かすためにあえて「オフショア法人」となることを選択するケースもあります。
オフシェア法人として使われる国
典型的なケースとなっているのが、イギリス領バージン諸島(通称BVI)やセーシェル、ベリーズといった国です。
こちらのオフショア法人の場合には、節税対策だけで会社をおいているだけですから、いわゆるペーパーカンパニーが殆どです。
知らない島にある会社など、危なくて仕方ないと思われるかもしれませんが、これはFX業者自身の節税対策に過ぎず、リアルオペレーションはまた別ということになります。
日本人に非常に人気があり、当サイトでもお勧めしている「XM」も2016年からセーシェルの法人を設立しています。
足元では世界的にパナマ文書の話が話題になっていますが、FX業界の節税対策でもこうしたタックスヘブンの島が有効利用されているというわけです。
オフショアの立地としては上述の3箇所が有名ですが、実はニュージーランドもオフショア国として利用が可能になっています。
ニュージーランドの場合にはニュージーランド国民を対象にする業者と、単にオフショア法人でニュージーランドでは一切ビジネスができない法人とに別れています。
後者オフショア法人の場合は、ニュージーランドだけではなく、主要国で登録されたライセンスを持っていることが安心となります。
一時オフショア事業者を金融庁がリストアップ
最近では殆ど解消していますが、こうしたオフショアブローカーを国内の金融庁が危ない会社としてリストアップしたこともありました。
しかし、最近ではこうした誤解はかなりなくなっていると思われます。
彼らにしてみれば日本で登録していない会社を「無許可」のうちに入れてしまうのかもしれませんが、しっかりと調べれば危険な会社と安心できる会社を見極めることは難しくはありません。
金融庁がリストアップしたとなると、怪しいイメージがついてしまうのは仕方がないことですが、必ずしも「金融庁に警告を受けた=詐欺業者」ではないことは確かです。
とにかく国内の金融庁は、こうした業者利用を法的には禁止していませんが、かなり敵視していることだけは間違いありません。
アメリカはオフショア事業者に厳しい存在
こうした業者に最も厳しいのはアメリカで、法律により米国内に法人格を持たない企業が米国籍顧客を取り込んで取引することを禁止しています。
海外FX業者は、米国の個人投資家を相手にはできないのが実情になっているのです。
したがって国をまたいでも法的な罰則規定のない、ユーロ圏と個人投資家が市場に半分近くを占める日本がメインターゲットの国になっているというわけです。
ただ、TPPのような取り決めが履行されることになると、こんな囲い込みのようなことは言っていられなくなるはずで、状況は改善する可能性もあります。
安全なオフシェア法人を見極めるコツ
このように「オフショア法人」というのは、FX業界では欧州系、キプロス系などを中心に多くなっているのが実情ですが、何もかも心配することはなく、キプロスでしっかり金融当局の登録を受けたり、英国で登録を受けている業者の場合は心配ないと言えます。
ただし、たとえば「セーシェルだけで登録を受けた会社」というのはタックスヘブンを利用した場合、セーシェル国内では取引ができないのが基本ですから、ほとんどその登録は意味がないことになります。
つまり、オフショア登録の業者の場合には「信頼できる第三国でしっかり登録・承認された存在であること」が、口座開設をする為の重要な要件となってくることは忘れないようにしたいところです。