ただ、市場関係者の間では、FRBによる引き締めは「9月はあまり現実的ではない」(外為ディーラー)といった声が聞かれており、現時点では12月実施がメーンシナリオとみられる。このため、8月雇用統計が予想に沿った内容だった場合、5日(米国はレーバーデーの祝日のため、休場)以降の取引では、ドル・円は上値の重い展開となるだろう。
一方、日銀の金融政策への思惑も広がりやすい。総括的な検証を踏まえ9月の追加緩和策としてマイナス金利の深掘りを模索しているとの見方が広がるなか、5日に予定されている日本銀行黒田総裁による講演(共同通信主催)での発言は注目材料となりそうだ。マイナス金利拡大の方向性が示された場合、金融機関の業績への影響から株安が見込まれるため円高に振れやすい。
【米・8月労働市場情勢指数(LMCI)】(6日発表予定)
7月の労働市場情勢指数(LMCI)は+1.0と今年初めて上昇を示した。また、6月分も-1.9から-0.1に上方修正された。2日発表の8月米雇用統計と合わせ、労働市場の需給の引き締まりが示されれば連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ方針を後押しするだろう。
【日・4-6月期実質国内総生産(GDP)改定値】(8日発表予定)
4-6月期四半期実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で+0.2%が見込まれている。下方修正された場合は、9月20-21日開催の日銀金融政策決定会合で追加金融緩和への期待が高まる見通しだが、市場がマイナス金利拡大を意識した場合、円高材料になる可能性がある。
・予想レンジ:101円00銭-105円00銭
・9月5日-9日に発表予定の主要経済指標のポイントは次の通り。
○(米)8月労働市場情勢指数 6日(火)午後11時発表予定
・7月実績は+1.0
参考となる7月実績は、+1.0。今年入って初めてプラスとなった。ただし、8月の非農業部門雇用者数は7月実績を下回ることや、不完全雇用率は横ばいとなる可能性があることから、7月実績の+1.0をやや下回る見込み。
○(米)8月ISM非製造業景況指数 6日(火)午後11時発表予定
・予想は55.4
参考となる7月実績は55.5と、6月の56.5から低下。新規受注は6月の59.9から7月は60.3に上昇した。仕入れ価格は低下した。8月については、仕入れ価格はやや上昇する可能性があるが、新規受注はやや低下するとみられており、全体的には7月並みの水準になるとみられる。市場予想は妥当な水準か。
○(日)4-6月期国内総生産(GDP)改定値 8日(木)午前8時50分発表予定
・予想は前期比年率+0.2%
4-6月期法人企業統計の数字を考慮しても成長率は特に変わらない見込み。企業設備投資の伸びはマイナス圏内にとどまり、個人消費の伸びも力強さを欠く結果となりそうだ。
○(日)7月経常収支 8日(木)午前8時50分発表予定
・予想は+20739億円
参考となる6月実績は+9744億円。原油安で貿易収支の黒字幅は拡大した。経常黒字は24カ月連続となった。7月については、貿易黒字は縮小すると予想されているが、第一次所得収支の黒字額は大幅に増加することが予想されており、経常黒字額は増大する可能性が高い。
○日米の主な経済指標の発表予定は、7日(水):(米)7月JOLT求人、(米)地区連銀経済報告、9日(金):(米)7月卸売売上高