米国では金融機関の投資部門の人員削減が大きく進んでおり、かぎられた人間のファンドマネージャーとAI、アルゴリズムが売買を担当していくという仕組みがさらに進みそうな状況です。
とくに大手金融機関の投資銀行部門や証券部門はかなりの数のファンドマネージャーがクビを切られていますので、残った人間はファンドマネージャーというよりは「クォンツマネージャー」でコンピュータを駆使して売買利益を獲得する専門家に特化しそうな状況となっています。
こうした動きは金融市場の相場の動きに少なからず影響を与えるようになっています。
人の裁量取引では怖くてやらない売買もAIが担当
人間が行う裁量取引というのは、どうしても高値になれば警戒感がでますし、一定の指標に上げすぎの状態がでるとどうしても逆張りや早めに相場から降りるという動きをしてしまいがちです。
しかし、AIの場合は過去のトレードでの近似値となるチャートを探してきて、トレンドが出ていれば容赦なくそれについていくという動きをしてしまいますので、人のトレードよりもかなりオーバーシュート気味の売買をする動きが顕在化することになります。
AI主導の相場では、これにいかに慣れるかが個人投資家にとっても大きな課題になってくるものと思われます。
人のファンドマネージャーも短時間の賞味期限を自覚
また人間のほうのファンドマネージャーも「どうせ長く務められることはない」といいう自覚のもとに、損をしても法を破らなければクビになるだけで損失の弁償もないことから、相当思い切って投資をしてくる傾向が強まっています。
どんなに優秀な人材でも、どうせ賞味期限は短いということを多くの域の切りファンドマネージャーが自覚しています。
ですから、ここぞとばかり売買をしてくるケースが多く、最近のNYダウの異常とも思える相場展開もAIに加え、こうした強気一点張りのファンドマネージャーが相場を思い切り持ち上げようとしていることが大きく影響しているようです。
金融の世界では確実な成果が出せないAI
こうしてみてきますと金融の世界もすっかりコンピュータとAIに支配されてしまいそうに思われます。
しかし、他の業界やプロセスで大きな成功を収めているAIは、必ずしも金融市場で絶対的な勝ちを謳歌するには至っていないのです。
これはディープラーニングという性格上過去のことを必死に学んで足元の相場がどうなるかを分析予想するからなのですが、金融市場というのは毎回過去と同じ動きをするとは限らないものが多いです。
とくに政治的な問題や地政学リスクなどが突発的に連鎖すると毎回異なる動きをするため、過去事例だけでは対応できないのが大きな理由のようです。
つまりこのあたりに個人投資家が、AIをしのいでやっていけるチャンスが残されているということもできそうです。