大豊作見通しがコーン市場に与える影響とは

 現地12日に米国農務省(USDA)は最新の需給報告を発表しました。今回の発表では、大豆、コーンの生産量がどの程度、修正されるか、という点が注目されていました。というのも、毎週発表される米国農務省国家統計局(USDA/NASS)の作柄報告では、大豆、コーン共に作柄報告が発表された6月初旬以来、良好な作柄を維持してきているうえ、夏場の熱波が懸念される時期を超えつつあるからです。  特にコーンに関しては、7月が開花~受粉の時期に当たるため、この時期を過去と比べてみても極めて良い状態で終えています。これまでの需給報告では、その良好な作柄が十分に反映されていないと見られていた分、今回の需給報告での米国の生産量がより注目されたのです。  その注目の16~17年度の米国のコーン生産量について、米国農務省はこれまでの予測145億4,000万ブッシェルから151億5,300万ブッシェルまで大きく引き上げました。これは、過去最大の生産量となります。  ちなみに、前年度となる15~16年度の生産量は136億100万ブッシェルだったため、この1年での増産幅は15億5,100万ブッシェルとなります。  このような大幅な上方修正となったのは、良好な作柄が反映された結果、イールド予測が前月までの168.0ブッシェルから175.1ブッシェルに引き上げられたことが背景となっています。このイールドは過去最高水準です。  米国農務省はこれまでイールド予測にはやや保守的とも見られる予測を発表してきていました。これは前月発表の需給報告において、作柄が良好な状態を維持しているにもかかわらず、前月と同水準のイールドが引き継がれていたことから見受けられます。  ただ、コーン生育にとって最も重要となるのが開花~受粉期を迎える7月であり、7月を熱波が広がればコーンの作柄が悪化するリスクが高いため、それまでは安易な修正は避けたい、というのがUSDAの姿勢と考えられます。  しかしながら、その後も良好な作柄が維持されていることから、今回の大幅な上方修正に至ったのでしょう。  なお、米国のコーンは例年と同程度のペースで生育が進行しており、コーンの実の形成が進むデント期を迎えている割合は8月14日時点で21%に達しています。順調に受粉を終えているうえ、早ければ2週間後から収穫が開始される地域が出てくることも見込まれるため、コーンの結実不良に対する懸念は大幅に後退し、150億ブッシェル超えという生産量が実現される可能性はよりいっそう高まっています。  コーン市場にとって、この大豊作観測は当然のことながら弱材料となります。すでにコーン市場では順調に生育が進行していることを受けて豊作見通しが強まるなか、440セント前後で推移していた6月下旬から地合いが崩れ始め、現地7月20日には340セントを割り込むまでに大きく値を下げています。  その後も良好なコーン生育状況は市場の重石となり続け、現地8月1日には340セントを超える場面が見られたものの、その後は340セントを下回る状態での推移が続いています。  すでに米国の大豊作の確実性が高まるなかでコーン価格が上昇する可能性があるとすれば、需要面での拡大が必要となります。  その需要に関し、今回の需給報告では飼料用の需要が前月予測から1億7,500万ブッシェル引き上げられた56億7,500万ブッシェル、輸出用需要が1億2,500万ブッシェル引き上げられた21億7,500万ブッシェルとなっています。  この上方修正を受けて、米国内の総需要見通しは前月予測から3億ブッシェル引き上げられた145億ブッシェルとされました。これは米国内需要としては過去最大であり、USDAとしてはかなり強気の見通しを示したと見られます。  とはいえ、生産量予測は前月に比べて6億1,300万ブッシェルも引き上げられて需要の上方修正分を大幅に上回っているため、米国内の需給緩和は避けられず、期末在庫率は前月予測の 14.7%から16.6%へと大きく引き上げられているのです。  ただ、すでにCBOT市場のコーン価格は、これまでの生育状況から大豊作を織り込んでいる感が強く、これ以上の下落に対しては強い抵抗があると思われます。  さらに下落する可能性があるとすれば、9月以降に生育が開始される南米諸国の生産量見通しが、現時点での予測を大きく上回ってくる可能性が浮上した時でしょう。同様に価格が上昇する可能性も、南米諸国での生育状態にかかっていると見られます。  過去に例を見ない大豊作となることで、米国のコーン価格は低迷を余儀なくされており、今後も同様の状態が続くことになりそうです。とはいえ、南米諸国の生育状況次第ながら、これ以上の下落余地は限定されると見られ、底もみ程度の動きを演じるものと思われます。 【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社日本先物情報ネットワークに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社日本先物情報ネットワークの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

[紹介元] コモディティレポート | Klug クルーク 大豊作見通しがコーン市場に与える影響とは