というわけで、現在の日本国民にとって「正しい話」を大本から理解することが、極めて重要になる。正しい話とは、要は「言葉の定義を根本から知る」ことである。同時に、データで事実を抑えるという意味でもある 例えば、 「日本は人口が減少するから、経済成長できない」 的な悲観論を語る人がいたとして、彼は「人口」「経済成長」の定義、意味を全く理解していない。理由は、根本から「人口」「経済成長」について知れば、我が国が経済成長をする絶好の機会を迎えていることを理解せざるを得ないためだ。 総務省が5月4日まとめた人口推計(4月1日時点)によると、14歳以下の子ども(外国人の子含む)の数は、前年比で15万人減の1605万人となり、35年連続の減少となった。少子化は相変わらず進行し、生産年齢人口比率の低下が止まらない。これは、日本経済の「成長」に対し、いかなる意味を持つのだろうか。 繰り返しになるが、「言葉の定義」は極めて重要だ。言葉の定義をしない人は、「人口」や「経済」について語るのをやめてほしい。 まずは人口だが、我が国の人口減少は総人口の減少というよりは、少子化による生産年齢人口比率の低下という問題なのである。総人口の減少率など、高々0.2%程度に過ぎない。それに対し、生産年齢人口の減少率は、総人口の4倍超だ。 すなわち、今後の日本が抱える問題は、 「生産年齢人口比率が減り、超人手不足が進行していく」 という現象になる。 さらに、経済成長。経済成長とは、実質GDPの拡大を意味する。実質GDPはいかなる状況で、継続的に拡大していくのか。 生産者(労働者)一人当たりの付加価値(モノ・サービス)の生産が拡大し、つまりは生産性が向上し、GDP三面等価の原則により「生産者一人当たりの所得の上昇」が起きることで、初めて継続的な経済成長という現象が生まれる。(付加価値の生産=所得である) それでは、生産者一人当たりの付加価値=所得が拡大する生産性向上は、いかなる状況で実現するのだろうか。もちろん、生産性向上のための投資(設備投資、人材投資、公共投資、技術開発投資)が行われたときになる。 それでは、生産性向上のための投資は、いかなる環境下で起きるのか。もちろん、「超人手不足」の時期である。 人手不足を生産性向上で補うために「資本」に投資することで、経済成長を果たす。これが、資本主義だ。 「人口」「経済成長」について正しく理解すれば、あるいは思考停止に陥らずに、真剣に考えることさえできれば、現在の我が国が、経済成長の絶好のチャンスを迎えているということが理解できるはずだ。何しろ、生産年齢人口比率が低下し、生産性向上が必須の超人手不足時代が訪れようとしている。 存在しない「財政破綻問題:と同様に、「人口減少で衰退論」もまた、国民から払拭するのは難儀しそうだ。とはいえ、正しい情報が国民に広がらなければ、我が国の経済成長はないため、今後も繰り返し、切り口を変えつつ主張していきたいと思っている。
第357回 正しい話(3/3)
[紹介元] 三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」 | Klug クルーク 第357回 正しい話(3/3)