大空を味方につけた高級SUV(スポーツ用多目的車)のオープンカーは、乗ってみると想像以上の異空間だった――。英ランドローバーの高級SUV「レンジローバー」が今秋、初のオープンカーであるイヴォーク・コンバーティブルを国内で発表した。屋根を切り取って迫力と色気を増したラグジュアリーカーから見えた景色とは。
SUVは使い勝手の良さと押し出しの強さから人気となっており、ポルシェやレクサスなど国内外の高級車ブランドが相次いで参入している。同じグループのジャガーも昨年、初のSUVを投入した。そうした中、ランドローバーは硬軟織り交ぜたバリエーションの拡大によって、身内のジャガーまでもライバルとなる激戦区で存在感の維持をもくろむ。
イヴォークは、2012年から国内販売されている中型SUVだ。伝統的な雰囲気の上級モデルよりも低い車高と短い全長で、軽快感と若々しさを強調。価格も500万円台からと、レンジローバーとしては最も手ごろに抑えている。
そんなイヴォークの屋根を取り去ってできたのが、ランドローバーいわく「世界初のラグジュアリー・コンパクトSUVのコンバーティブル」。ただ、似たコンセプトでは、かつて日産が、より大きなSUV「ムラーノ」のオープンモデルを北米で売っていた。ランドローバー側の定義ははっきりしないが、競合モデルに乏しい希少な仕様であることは確かだ。
■勝ち組の証の趣味グルマ?
電動式の幌(ほろ)を全開にして走り出す。2リッター直4ターボのエンジン音は、オープンエアとは思えないほど静か。エンジンはオーバースペックとも思える9速ATで、極めてスムーズに走り出す。両サイドの窓を上げておけば風切り音も巻き込みも少なく、助手席に置いた取材メモの紙が飛んでいくこともない。
横浜―川崎間のバイパスを流す。貨物トレーラーが慌ただしく行き交う中でも、FMラジオの音声がくっきり聞こえるほどの静寂に包まれた四座の室内。かすかに入り込む排ガスと砂ぼこりの匂いが、このクルマがオープンカーであることを思い出させる。
ところが、人通りの多い繁華街に入り車速を落とすと、派手なオレンジという車体色もあいまって、とにかく好奇と奇異の目にさらされることになる。クーペと比べればはるかに高い車高に、乗員の肩口近くまで覆う大きなドアパネル。歩行者が見上げると、どうしても、乗員はヒョコッと顔だけを出して走っているように見える。なぜか、ボードゲーム「人生ゲーム」の自動車コマをどうしても想起してしまう。
車両価格765万円。20インチの大径ホイールや電動シートなどを追加していくと、オプション価格はゆうに100万円を超える。文字通り人生ゲームの成功者、勝ち組の証の趣味グルマといえなくもない。誇らしげに沿道の視線を浴びたい人にはうってつけだろう。
もちろん、シャイな勝ち組でも大丈夫。時速48キロまでであれば、走行中でも幌を折り畳める。幌を閉じれば、キャンバス地の屋根がしっとりとした風情を醸し出す。リアガラスを丸ごと収めるため、荷室が狭くなるのを我慢すれば、スタイリッシュで上品な乗り物だ。
車体剛性を保つために2トン超まで車重が増えたためか、挙動は比較的おっとりした印象で扱いやすい。また、見切りの良いボディー形状のおかげで、大きさの割には取り回しに気を使わずに済む。国産車に比べて操作性にクセがあるナビ画面にさえ慣れれば、比較的リーズナブルな価格でセレブ気分に浸れるパーソナルカーとして、季節を選ばず楽しめそうだ。(北林慎也)
[紹介元] 朝日新聞 経済ニュース 視線浴びセレブ気分? 高級オープンSUVに乗ってみた













