好調な米国のコーンの生育は何を示しているのか。

 CBOT市場ではコーン価格が反落に転じています。現地19日の取引では中心限月の9月限は前日より15.25セント安の341.75セントと大きな下げ幅を記録しての下落となりました。  コーン価格は4月の作付け初期から6月半ばに至るまで、総じて強い足取りを演じていました。特に6月に入ってからは何度も目先の上値抵抗となっている440セントにトライする動きを見せるなど、地合いの強さを窺わせる動きを見せていたのです。  それが6月下旬には下値追いに転じているのです。ちなみに急落直前の取引となった6月17日の終値は437.75セントでした。しかしながら、週明けとなった6月20日以降は急激に下値を追う足取りとなり、現地7月6日の取引では339セントまで値を落としています。  それでは、価格が上昇していたコーン価格が急反落に転じた理由とはどのようなものなのでしょうか?  すでに知られているように、今年は4月から5月にかけて南米諸国が高温乾燥に見舞われた結果、ブラジルではこの数年で生産量が大幅に増加している2期作目のコーン生産量が大きく減少することが確実となりました。  米国農務省(USDA)の需給報告によると、15~16年度のブラジルのコーン生産量予測は4月発表時点では8,400万トンが見込まれていました。しかしながら、5月発表分では8,100万トン、6月発表分では7,750万トン、そして最新の発表となる7月発表分では7,000万トンまで下方修正されています。  このように生産量が下方修正されると同時に、ブラジルのコーン輸出量予測も4月時点の2,800万トンから7月分では1,850万トンまで引き下げられました。一方、米国のコーン輸出量予測は4月発表時点の4,191万トンから7月発表時点では4,826万トンまで引き上げられています。  つまり、ブラジルの生産量が予想を下回るとの見方が強まるに従って、米国のコーン輸出量が拡大するとの見方が濃厚となるなか、その予測を裏付けるUSDA需給報告の発表が行われた結果、米国内のコーン需給引き締まり観測が強まり、これが価格を押し上げる原動力となっていたのです。  しかしながら、米国の15~16年度の需給引き締まりは確かに見込まれるものの、16~17新穀年度の生産分となる今春作付コーンの生育次第では、引き締まった需給が再び緩む可能性があります。  当然のことながら、市場もこの事実を十分に認識しており、それが故にコーン価格は昨年度と同程度の高水準まで上昇したと考えられます。  そこで注目されるのが米国の生育ペース並びに作柄状況です。というのも、生育ペースが遅かったり、作柄の悪化が確認出来るようであれば、生産量がこれまでの予測を下回る可能性が高まるからです。  実際の報告の内容を見てみると、現地7月19日に発表された最新の報告では、シルキング率の18州平均は56%と前年同時期の47%、過去5年間平均の46%をいずれも上回っていました。これに加え、作柄は良~優が占める割合が76%と、極めて高い水準となっています。  今年の場合、作柄報告の今年度分の最初の発表から良~優の状態は70%を維持し続けているばかりか、日を追うごとに優の状態が増しています。これは過去最高のイールドを記録した2014年度を上回る状況です。  さらに注目されるのが、すでにコーン生育に関しては最も注意すべき時期である7月も終盤に差し掛かっているという点です。シルキングというのは受精の準備をする時期ですが、シルクキング率が1週間で20%余の上昇が見られていることもあり、7月中にはこの時期を過去に例を見ないほど良好な状態でほぼ終えることが見込まれます。  今後、8月の天候がどうなってくるのかが次の注目要因となってきますが、米国中西部の土壌水分はオハイオ州以外が適度な状態を維持しているうえ、すでにシルキングを終えつつあるという時期的な面からも、生産量が大きく落ちるほどの影響をもたらすにはよほどの高温乾燥が広がる必要があると考えられます。  米国農務省は7月の需給報告において米国のコーン生産量予測を過去最大となる3億6,933万3,000トンに達すると予測しています。現在の米国コーンの生育ペース、作柄状況から見ると、この生産量予測が大幅に下方修正されるためには8月を通して熱波が続くなど、よほどの天候不良が必要と考えられます。それだけに一時は盛り返しつつもあったコーン価格が再び上を目指す可能性は大幅に低下したといえ、サプライズ的な材料で価格が上昇したとしても、長期的に需給に影響を及ぼすもの出ない限り、当面の間、コーン価格の低迷は避けられないように思われます。 【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社日本先物情報ネットワークに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社日本先物情報ネットワークの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

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