国内のFX業者が一様にロスカット制度を採用している理由

ロスカット

国内のFX業者はすべて「強制ロスカット制度」を採用しています。

ロスカットのレベルについては、各業者に任せられていますが、これは一般社団法人金融先物取引業協会によって定められた自主ルールによるものです。

しかし、この仕組みが履行されるようになった背景には「金融当局」からの強い行政指導があったからに他なりません。

 

金融庁による行政指導がベースとなった制度

金融庁

この「マージンコール」と「強制ロスカット制度」の義務付けは、法令化されているわけではありません。

いわゆる行政指導のひとつであり、2008年のリーマンショックの大暴落以来、消費者保護の名目でレバレッジに上限を設けたのと同時に、証拠金以上の損失を出さない為に設けられた制度です。

つまり事実上、業界団体は金融当局の指導に合わせて設定をせざるを得なくなっている制度と言えるです。

マージン

マージンコールとロスカットレベル@何%が適切なのか?

 

暴落時には証拠金を超える損失が発生

大暴落

強制ロスカットという発想は「利用者が投入した証拠金以上に損失を出さない」ように、しっかりその手前で業者自らが「強制的に損切り」を行うことが基本になっています。

しかし、これまで相場の暴落が起きると通常の想定を遥かに超えた事態が発生し、こうした強制ロスカットが消費者保護にはならない事が何度も起きているのです。

まず強制ロスカットのラインは、本来ならば「確実に通過すべきもの」です。

しかし、暴落になってインターバンクからの値がでなくなり、大幅に下回ったところではじめて強制ロスカットになってしまいますと、完全に証拠金を超える損害が出ることになります。

また、最近の事例でいいますと、楽天FXが2016年3月17日に突如としてドル円のスプレッドを「1500pips」開かせてしまうという異常事態が起きています。

こうした驚くべきワイドスプレッドが出てしまいますと、下落時に強制ロスカットとなるレベルが本来のレベルよりも遥か下の方になってしまうのです。

この「1500pips」ワイドスプレッドでは、15円下の価格で決済されることになりますから、法外な追証を求められることになるわけです。

※楽天FXのドル円5分足チャート(2016/3/17)

楽天

この事例は誰がどう見ても「おかしい」と感じるのではないでしょうか。しかし楽天FXが「追証」を求めてくれば基本的には顧客の支払い義務が生じます。

何故ならば、どこの会社であっても口座申込時の必ずチェックさせられる「免責条項」に、
「システム環境に不具合が生じ、ロスカット機能が働かない場合においても一切責任は負わない」といった趣旨の記載がされているからです。

楽天FXの場合、その後ユーザー側とどのような決着がついたのかは、全くニュースでも報じられておりません。

これが、誤動作の扱いになっていて追証を求めないのかもしれませんが、このような予期せぬ事態は楽天FXに限らず、どんな業者であっても起こってしまう可能性があるのです。

つまり「金融庁が頭で考えて設定している安全策」をリアルな相場は、遥かに超えてしまっている事実が明らかになっています。

 

なぜゼロカットシステムを導入しないのか?

何故?

海外FX業者は利用者が投入した証拠金以上の損失が出ると「ゼロカット」と言って、それで取引を終了する仕組みをもっており、多くの業者がこの制度を適用しています。

金融庁が「利用者保護」を強く訴えるならば、間違いなくこうした「ゼロカットシステムを業界全体で導入すべき」なのですが、残念ながらなぜか国内では全くそういった動きがありません。

2015年の「スイスフランショック」で廃業を迫られた海外の業者の状況を確認すると、ゼロカットシステムの適用は暴落時において「FX業者に大きな損失をもたらす仕組みになっている」事が改めて明るみに出ました。

つまり、日本のFX業者はこの制度を ”あえて導入していない” ように見えます。

真偽のほどはよくわかりませんが、この部分については「透明性が極めて低い」のが現在の国内業者の状況です。

ショック

2015年スイスフランショックがもたらした歴史的な悲劇

 

DD方式の国内業者では値とびも説明にならない

言いわけ

国内業者のFXビジネスは「DD方式」「NDD方式」と呼ばれるものが混在しています。

「DD方式」は社内にトレーディングデスクを置いて、顧客どうしの買いや売りを相殺したり、顧客と反対の売買を行って利益を上げる仕組みをもっている業者のことです。

また「NDD方式」というのは社内にこうした売買をするデスクは一切置かずに、すべてのオーダーを外部のインターバンクに振り、そこにマージンを載せるビジネスです。

つまり、NDD方式ではトレーダーと業者の「利益相反は起こらない」ことになります。

本来DD方式で売買を行う業者ならば、外部のカバー先から金額が出ようが出まいが、強制ロスカットが起きる時に約定条件どおりにカットすべきです。

しかし、何故か暴落が起きると国内業者は必ず「カバー先から価格がでなかった」と、口実にする点も実に不可解なものとなっています。

カジノ

DD方式とNDD方式の違いを徹底解説!どっちがいいの?

 

スプレッドで失う利益をDD方式でリカバー

カバー

日本国内のFX業者は、他国にはないサービスを利用者に展開しています。

それがドル円などにおける「原則固定の最狭スプレッドサービス」です。

カバー先のインターバンクを何十社設定しても、原則固定でスプレッドを提供するというのは、それ自体が架空の世界であり、本来はありえないものです。

国内の業者は少ない枚数の取引では、確かにこうした原則固定を貫いていますが、試しに1万通貨1回200枚などという発注をしますと、実はすべてが約定しないケースも多々あるのです。

国内は競争環境が厳しいが故にこうした厳しい「狭いスプレッド競争」が激化しています。FXが誕生して間もなかった10年前ドル円のスプレッドは「2pip付近」の提供でした。

しかし、現在は「1pips以下」のスプレッドを当然のように提供し「0.3pips」を下回る業者もでてきました。スプレッド=業者の手数料ですから、このような狭いスプレッドはFX業者の利益を圧迫するものです。

つまり、その分儲からないところを補っているのが、「DD方式による業者の反対売買」のようにも見え、このあたりから急激に判りにくさが高まってくることになるのです。

いずれにしても国内金融当局は、微妙に国内FX業者に自由裁量を与えることで利益を確保する道を残しているように見え、ゼロカットシステムもあえて業界には強要していないように思われます。

「海外FXは怖い」というトレーダーは国内には多く存在します。

しかし、実はグレーゾーンが多いのは海外よりも国内の店頭FX業者の方で、海外業者のビジネスの方が「単純明快」で透明性が高いサービスを提供しているとうい見方もできることを忘れてはなりません。