英国のEU離脱が穀物市場に与えた影響とこれから

 現地6月23日に行われた国民投票において、英国ではEU離脱派が残留派を上回ったことによって英国のEU離脱の方向性が定まったことを受け、金融市場は大混乱に陥りました。  国民投票の結果が明らかとなった現地24日の取引を振り返ってみると、日本市場では日経平均株価が前日より1286.33円安で引ける一方、米ドル・円相場は、1ドル99円台までの円高が急速に進行するなど、安全な投資先への資金流入の動きが顕著となりました。  また、この逃避買いの需要は金市場でも見られており、NY金市場では国民投票の結果が開票される前日まで小安い動きを見せていたものの、開票結果が明らかとなった直後の24日の取引は暴騰場面を演じました。  この日、中心限月である8月限は前日より59.3ドル高の1322.4ドルで取引を終えています。  ちなみに、逃避買い需要が見られたのはNY金市場だけではありません。東京市場における金、期先限月の終値も23日の4239円に対し4321円にまで上昇しています。この間、通常ならば金の売り要因となる円高が進行していたことを考慮すると、金市場の買い意欲が如何に高まっていたかが分かります。    このようなリスクを回避して安全な投資先を求める動きは穀物市場でも見られていました。現地24日の取引においてCBOT大豆7月限は前日より21.50セント安の1103.00セントで、そしてコーン7月限は前日より2.75セント安の384.50セントで取引を終えています。  しかしながら、穀物市場はその年度の世界生産量によって需給見通しが変化し、これが価格推移に直接的な影響を与えるという、”商品”市場ならではの側面を強く持ちます。この穀物市場を組成する基本的なファンダメンタルズの違いが週明け27日の取引で見られます。  この日、NY株式市場は英国のEU離脱ショックを引きずって続落場面を演じ、ダウ平均は3月11日以来の安値となる17063.08ドルまで値を落としました。  一方のCBOT大豆市場は27日にはすぐに反発に転じており、中心限月の8月限は前営業日の終値1103.00セントを26.75セント上回る1129.75セントで取引を終えています。続く現地28日の取引でも続伸場面を演じており、すでに英国のEU離脱ショックは織り込んだ形となっています。一方のコーン7月限も24日の終値384.50セントに対し27日には389.25セントで取引を終える反発場面を演じました。  このような動きを穀物市場が見せているのは、やはり、金融商品としての側面は持つにしても、独自の需給要因が価格に直接的に影響を与える傾向が圧倒的に強いことが背景となっています。  特に、今年は予想外の米国の需給ひっ迫の可能性が浮上していることが、市場の警戒感を強めています。というのも、4月から5月にかけて南米諸国が高温乾燥に見舞われたことを受けて南米諸国の大豆、コーン生産量がそれぞれ引き下げられたことが、米国の大豆、コーン輸出を活発化させる結果、米国内の穀物需給もそれまで予測されていた以上にひっ迫傾向を強めると予測されているからです。  また、現在、米国の産地では順調に生育が進行しているとはいえ、コーンにとっては生産量のカギを握る時期の始まりとなるシルキング期を迎えていることが明らかになったことで、夏場の熱波に対する警戒感がよりいっそう高まっているのです。  これまでの経験から、5月、6月に天候不良に見舞われても、生産量にはそれほどの影響は見られない一方、コーン、大豆のそれぞれが開花~受粉の時期を迎える7月~8月の時期に高温乾燥に見舞われた場合、生産量が一気に落ち込む可能性が高いことが知られています。  さらに、今年はラ・ニーニャ現象の影響で例年よりも米国中西部が高温乾燥に見舞われる可能性が高いと考えられています。  それだけに、独自の要因から早々と英国のEU離脱ショックを織り込んだ穀物市場は、 最も天候に対する警戒感が高まる時期を迎えたことにより、売りが手控えられる可能性が高まり、当面は上値波乱の可能性を含めながらの高もみ場面を演じるものと予想されます。 【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社日本先物情報ネットワークに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社日本先物情報ネットワークの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

[紹介元] コモディティレポート | Klug クルーク 英国のEU離脱が穀物市場に与えた影響とこれから