2月初旬の取引において中心限月が26.05ドルまで値を落としていたNY原油は、その後は時折売られながらも、売りを消化しながら上を目指す足取りを演じていました。 前述の安値を付けた2月8日から約4ヵ月後の現地6月9日の取引では、中心限月である7月限は51.67ドルまで値を伸ばしたのです。この4ヵ月で25.62ドルの上げ幅を記録したことになります。 そもそもNY原油は、シェール革命によって米国のエネルギー生産量が拡大したことで米国内の石油在庫量が大幅に膨らむなか、需給過剰感が強まったことで2014年下半期に大幅に値を崩しました。その後、2015年、2016年と60ドル以下での価格推移を強いられるなど、低迷場面を演じていました。 それが、この4ヵ月で大きな上げ幅を記録したのは、供給過剰感とこれに伴い原油価格が低迷するなか、米国のシェールオイル生産量が減少傾向を見せていたことが背景となっています。 ちなみに、米国エネルギー省エネルギー統計局(EIA)が6月13日に発表した報告によると米国のシェールオイル生産量(日量)は、6月が484万1,000バレル、7月が472万3,000バレルと9カ月連続で減少する見通しとなっている。 しかしながら、このような減産見通しにもかかわらず、NY原油は現地6月9日の取引で51.67ドルまで上昇しながらもその後は反落に転じています。現地6月17日につけた安値は45.83ドルと、5月13日以来の水準まで値を落としているのです。 その後はさすがに下げ修正的な動きも入って持ち直しているものの、49ドルを前後する足取りとなり、50ドル突破に向かっていた6月初旬の力強さとは異なる動きを見せています。 NY原油がここに来て反落に転じた理由として考えられるのが、まずBrexit問題です。英国がEUから離脱するか、それとも残留するかを巡る現地6月23日の国民投票を前にして、金融市場ではリスク回避の動きが活発化しており、安全な投資先として考えらえる資産へと資金が集中する傾向が見られています。 これに対し、リスクを抱える資産からは資金が流出する傾向が強まっています。原油市場もリスク回避の動きが価格下落の一因になっていると考えられるでしょう。 また、もう一つの理由として挙げられるのが、減産傾向にあった米国の産油量が下げ渋りに転じつつある、という見方です。 EIAの発表によると、現地6月10日時点の米国の産油量は日量871万6,000バレルでした。これは前週に発表された産油量874万5,000バレルからは減少していますが、その量は僅かに3万9,000バレルにとどまっています。 原油価格が回復傾向を見せるなか、シェールオイルの減産を継続する必要性は低いと見られることもあり、今後も原油価格が現在の水準を維持するようであれば、シェールオイル生産量の更なる減少は考え難いと思われます。 なお、国際エネルギー機関(IEA)は、5月の月報において2016年度の石油需給は均衡に近づくとの見方を示しています。年初時点でIEAは2016 年度は1日当たり150万バレルの供給過剰になるとの見通しを明らかにしていました。 しかしながら、その後の原油価格の低迷が、米国を始めとする主要産油国の減産傾向を強めたことを受けて需給が引き締まる方向に転じられています。また、OPEC加盟国であるナイジェリア、ベネズエラ、リビアの産油量が減少していることもこの需給均衡見通しの一因になっているでしょう。 とはいえ、石油価格が上昇ればシェールオイル生産量が再び拡大する可能性もあります。現在、北半球は需要最盛期を迎えつつありますが、今後の世界の需要動向次第では、再び石油需給は過剰に傾く恐れもあります。 現状から見る限り、原油価格の上昇によってシェールオイルの増産傾向が強まると想定されることもあり、今後、原油価格は上値を抑制される中での推移になると予想されます。しかしながら、波乱要因としてOPEC加盟国である先の3か国が挙げられます。これら3か国において著しい供給障害が発生するようであれば、上値波乱となる可能性が残されている点を留意しておきたいところです。 ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社日本先物情報ネットワークに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社日本先物情報ネットワークの許可無しに転用、複製、複写することはできません。
NY原油は再び上を目指せるのか
[紹介元] コモディティレポート | Klug クルーク NY原油は再び上を目指せるのか