今回の英国のEU離脱決定についてですが、そもそもキャメロン首相が国民投票を行うなんて約束したことが間違っていたのだという声が聞こえてきます。 英国内でのそうした論調に影響されてか、我が国でもそうした批判がなされています。 でも、それはちょっとおかしいのではないでしょうか。 というのも、民主主義社会における主権者は国民自身であり、そして、その国民の意見が最大限尊重されるべきであるところ、国民投票の結果、そのような判断が下されたのですから、それに従うのが当然だからです。 国民の判断の内容の如何によって、それがおかしいなどと後で批判しても始まらないのです。 ところで、在英ジャーナリストの小林恭子氏によれば、離脱派の人々は次のような人たちから成るとされています。(「英国がEU国民投票で離脱を決断 ―疑問点をまとめてみました」、6月24日) ―誰が残留をあるいは離脱を支持したか 残留はキャメロン首相、大部分の内閣、下院議員、労働党、自民党。エコノミストたち。OECD、IMF、イングランド中央銀行。カーン現ロンドン市長、オバマ大統領、ベッカム選手、ハリーポッターシリーズのJKローリングや俳優のベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレーなど。中・上流階級(日本の中流よりは少し上の知識層)、国際的ビジネスに従事する人、若者層。 離脱はジョンソン元ロンドン市長、ゴーブ司法大臣、ダンカンスミス元年金・福祉大臣、ダイソン社社長、労働者・中低所得者の一部、英連邦出身者の一部、中・上流階級の一部・保守右派で「大英帝国」信奉者、高齢者の一部。 (中略) 「残留派=高い教育を受けた人、グローバル化の恩恵を受ける人、国際的な経験が豊富な人、一定の収入がある人、若者層」 「離脱派=労働者階級の一部、それほど教育程度の高くない人、グローバル化の恩恵を受けない人、一部の高齢者」 確かにジョンソン元ロンドン市長というのは、トランプ氏によく似た風貌をしており、考え方も似ているようにも思われます。 恐らく、キャメロン首相を批判する人々は、そのようなバイアスがかかっているのではないでしょうか? つまり、それほど教養のない人たちが感情に流されて、ただEU離脱を支持しているだけだ、と。トランプ氏の主張が全くおかしいのと同じように英国がEUを離脱するのも理にかなったことではない、と。 でも、EU離脱が正しくないと、誰が証明できるのでしょうか? これは判断の問題なのです。正しいとか正しくないとかではなく、どちらを貴方は好みますか、と。 国民投票の結果、愚かな判断がなされたなんて批判することは、民主主義の自殺行為といってもいいでしょう。 もし、国民投票の結果、間違った判断がなされることも多いと最初から予見できるのであれば、だったら、国民に信を問う必要はないのですから。 そう思うのであれば、賢明なリーダーに判断を委ねればいい、と。 しかし、一見賢明と見られるリーダーたちが、いつも適切な判断を下すとは限らないのです。だから、独裁政治ではなく民主政治が選ばれているのです。 国民投票にかけるなんてことをキャメロン首相が約束しなければ、こんな事態にならかなったと言うのであれば、民主主義とはいってもそれは形だけのことになってしまうでしょう。 我が国においても、7月10日の参議院選挙から18歳以上の若者にも投票権が与えられることになりました。若者は政治に関心を持ち、是非選挙に行く気べきだなどと日頃、説教を垂れる日本のマスコミ関係者が、キャメロン首相が国民投票を行ったのが間違いだと聞くと、この人たちの頭のなかはどうなっているのだろうかと思ってしまうのです。 以上
キャメロン首相が国民投票を行ったのが間違いだという愚か者
[紹介元] 小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! | Klug クルーク キャメロン首相が国民投票を行ったのが間違いだという愚か者