「ヘリ・マネ」は期待薄も、追加緩和期待強い~日銀金融政策会合

 日本銀行は28日、29日に日銀金融政策決定会合を実施します。 市場では今会合での緩和期待を強めています。  21日の海外市場で黒田日銀総裁がヘリコプターマネー実施の可能性を否定するインタビューがBBCで流れ 一気に円高が進んだように、市場は日銀の政策にかなりの関心を持っています。  同インタビューは実施時期がブレグジット決定前の6月中旬と 最近のものではありませんが、 それでもドル円は107円台から105円台に急落。 その後の戻しも鈍く翌日の東京市場も105円台を中心にした推移と 円安ムードが一服するほどの影響を受けました。 ドル円が上昇した際には、バーナンキ前FRB議長がヘリコプターマネーに言及したという 4月の発言が材料視されたように 市場ではヘリコプターマネーへの期待感が相当強いようです。  では、今会合で同施策が実施される可能性はどれぐらいあるでしょうか。  実は可能性は相当低いものとなっています。  狭義な定義でのヘリコプターマネーである 政府発行債券の日銀直接引き受けなどは 財政法第5条で すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、 又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。 但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。 とはっきりと否定されています。  国会は閉幕中(開くのは早くて9月の臨時国会)のため、 法改正の可能性もなく、 実質上は不可能です。  そもそもこのような法律ができるぐらい これらの施策はリスクの大きなもの。  これまでの黒田総裁発言なども踏まえると、 法律を回避する形での実施も含め 検討に入る可能性はそれほど高くなさそうです。  では、どのような緩和が考えられるでしょうか。 まず、目立つところではマイナス金利の拡大があげられます。 市場へのインパクトはかなり大きい施策となりますが、 今年1月の導入以降、20年債の利回りまで一時マイナスになるなど 長期金利も含めすでに大きな影響が出ています。 結果として 三菱東京UFJ銀行がプライマリーディーラー資格を返上するなど 金融界からもかなりのネガティブな反応が見られており ハードルはかなり高いと思われます。  つづいては、国債買い入れの増額です。 マイナス金利導入まではメインの金融政策手段でもあった買い入れ増額(マネタリーベースの拡大)については 可能性は十分あります。 ただ、これ以上の買い入れを行うと 国債市場への影響がかなり大きなものとなります。 現状でもそろそろ持続が難しいのではとの懸念が出ている状況だけに これ以上の枠拡大には慎重な姿勢も見られるという見方があります。 実施すつとしても、 9月の臨時国会で提出されるとみられる政府の第二次補正予算案の発表後となる 秋口になるのではという見方が一般的のようです。  さらには、ETFの枠の拡大などです。 これは可能性としてかなりありそうなところ。 ただ、ブレグジット後の進んだ株安がとりあえず戻してきたところ。 慌てて今回実施してくる必要性までは感じさせませんが、さてといったところです。  後、可能性として考えられるのは 日銀が金融機関に貸し出す「貸出支援基金」のマイナス金利です。 これにより邦銀各行はマイナス金利で日銀から融資を受け 新規の貸し出しを行うことができるようになります。 日銀が期待する融資拡大に向けて有効な策ではとの見方もあるようで 可能性が十分ありそうです。  最後の2策の効果はともかく、採用してくると、市場の円安の流れをサポートしてきそうです。  一方もう一つの可能性としては、今回緩和を見送るというパターンです。 株、ドル円ともにブレグジットショックを解消し、 落ち着きを取り戻しているだけに 慌てての緩和実施が必要かどうかという見方もあるようです。  ただ、市場がここまで期待している以上 緩和を見送ると瞬間的には円高に振れそうです。 このあたりのリスクも意識しておきたいところです。

[紹介元] ダックビル為替研究所 | Klug クルーク 「ヘリ・マネ」は期待薄も、追加緩和期待強い~日銀金融政策会合