店頭FX会社との取引では、預託した証拠金がしっかりFX業者の事業資金と切り分けられて「信託保全」されている必要があります。
国内のFX業者では、こういった仕組みが義務付けられていますので、日本の投資家にとってはもはや当たり前の取引条件になっています。
しかし、海外FX業者の場合はどうでしょうか?大切な資金を守る為には、国内業者のような仕組みができているかどうかが大変重要になってくるのです。
端的に言いますと、国内の業者のように信託保全の条件がそろっていない海外業者も多いのが実情です。したがって取引に当たっては、この視点でしっかりその内容をチェックすることが必要になります。
国内でも顧客の資金管理が劣悪な時代があった
考えてみれば「顧客から預かっている資金」であるわけですから、自社の事業資金と切り分けるのは当たり前の話です。
たとえば、生命保険における投資型の商品では通常の資金と別に特別勘定で運用するようになっていますし、FXに関しては一旦預かっているだけの資金ですから、分離させるのは当然です。
しかし、国内で店頭FX業者が多く登場した2007年頃は、まだ成熟した業界ではなかった為、こうした「分別管理」や「信託保全」という仕組みはできておらず、丼勘定のなかで維持されるという極めて恐ろしい時代があったのです。
さすがに金融庁もこれにいち早く気づき、国内では「信託保全」という仕組みを導入しました。
ですから、今では国内で事業を行っている店頭FX、取引所FX業者はともにこの仕組みを履行することが必須の条件となっているのです。
信託保全でも倒産時すぐに、全額投資家には戻らない
国内で広く導入された「信託保全」という仕組みは、証拠金の管理者を外部において見張る仕組みにはなっています。
ですから、万が一業者が倒産した場合には、預託金は返還されるというのが共通認識です。
信託保全には「全額信託保全」という仕組みと「一部信託保全」という2つの仕組みがあり、通常は「全額信託保全」を利用することが基本となっています。
ただし、一定期間に保全額の入れ替えをしている業者も存在しますし、外貨保有分は信託保全されていないといった細かいケースもあります。
ですから、「全額信託保全を行っているから預けたお金はすべて返ってくる」と安心するのは、実は業者が倒産してみないとよくわからないところもあるのです。
疑えばキリがありませんが、FX業者に預けた資金が「確実に信託保全先の銀行等に確実に渡っているか?」を我々個人投資家がチェックする術はありません。
FX業者が倒産した場合には、管財人にその資金の返還割り当ての権限が与えられますので、そこで始めて残った保全金額を応分に返還されるということになるのです。
ここのところFX業者が国内で倒産するといった事例はありませんので、預け入れた金額が全額戻るのか、それとも一部差し引かれるのか定かでありませんが「全額無条件返還」と最初から理解しておくのは、信頼しすぎということになります。
このように、国内の業者と相対契約を結んで資金を預託しても「それなりのリスクは常に突いて回る」という事はしっかり認識しておかなくてはなりません。
海外のFX業者の場合にはどうなっているのか?
国内の業者を使って売買するのでも、上記のように結構ファジーな部分があるわけですから、一体海外のFX業者はどうなっているのか?というのは気になるところです。
実は、海外にも「信託保全」に順ずる仕組みが用意されています。
1.2万ユーロまでの信託保全がされる業者
海外FX業者が独自にICF、いわゆる「投資家補償基金」に加盟している事が重要です。
ICFに加盟している場合、万が一業者が破綻するという事態に陥ったり、支払い義務を怠る状況になっても「2万ユーロを上限として資産は保全されて」顧客に支払われることになりますので、この金額までは戻ってくると考えていいと言えます。
ですから、安全性を第一に考えるのであれば、ハイレバレッジの口座の場合には、この金額を超えるような証拠金を入れないのが、賢明な取引方法ということが言えます。
ただ、注意していただききたいのは、この段階における証拠金はあくまでも「初期に預託した金額がベース」になります。
たとえば日本円で100万円を預託し、その後儲かった部分を証拠金に上乗せして運用していた場合「利益部分は補償されないこともある」ので利益管理も重要になってくるというわけです。
仮に単月で500万儲かったといった時に、一旦自分の口座にこまめに出金できる仕組みをもった業者を利用するのが重要になります。
2.分別管理のFX業者
海外FX業者の場合、信託保全ではなく事業資金と預かり金を分けて管理する「分別管理」という方法をとっている会社が多くなっています。
お客から預かった証拠金には一切手をつけないという発想で行っているわけですが、実はこの方式は立ち上がって間もなかった頃の国内のFX業者も同様に行っていたものです。
精神的には資金が分離しているということはわかりますが、この方式では万が一の時に顧客に資金が返還されるものではなく、事実上管財人に任される「非常にリスキーな管理方法」ということが言えます。
直近で日本人投資家を対象とした海外FX業者が倒産した事例は発生していない為、具体的な事例として提示できるものはありません。
しかし、2015年1月にスイスフランショックの際、日本にも法人のあったアルパリがイギリスでいきなり事業が立ち行かなくなった時には、瞬間的にこの会社の事業資金のほとんどが消えてなくなってしまったのが実情です。
この時、ICFに加盟していたからなんとか証拠金だけは個人投資家に応分の返還が行われたという事実があります。
海外FX業者を使用するにあたり「分別管理」の仕組みを持った業者については、サポートに問い合わせるなどしっかりとその内容を確認しておくことが大切です。
安心して取引できる海外FX業者は意外に少ない
この信託保全という視点で海外FX業者をみますと「XM」や「FXPro」などは大手でユーロ圏でも大きなビジネスをしている関係から、2万ユーロの信託保全を適用しております。
「XM」は2016年から日本人の申し込みは「セーシェル法人」に移行しました。信託保全がどうなるのか?を直接サポートに問い合わせみた記事が下記です。
⇒ https://fx-lony.jp/gyousya/xm_sintakuhozen
この2業者は、かなり安心して取引ができる業者になっていますが、その他の業者は分別管理しか行っていないところが多いのが実情となっています。
こうした信託保全に自信をもっているFX業者は、ホームページ上にしっかりその旨を記載していますから、すぐに判断できるのが特徴となっています。
逆にいくら探しても、ホームページ上にそうした表記が細かくされていない会社は少なくとも、ICFには加盟していない可能性を疑ったほうがいい状況です。
キプロスのFX業者はICFに加盟が義務づけられている
ひとつ朗報なのは、キプロスで証券取引委員会(CySEC)のライセンスを取得しているFX業者は、全てこのICFに加入が義務付けられているため、最低2万ユーロは補償されています。
また、分別管理は不安であると書きましたが「分別管理の依頼先が欧州系の大手銀行で監査法人がしっかりしている」ことがきわめて重要となります。
店頭FX事業者が自己都合でこうした基金を取り崩すことは本来できませんので、ICFの御世話にならなくても資金は戻る可能性が高いです。
ただ、こればかりは実際に起きてみないと、どうなるかは判らない部分があります。
海外FX業者だから闇雲にリスクがあるわけではない
このように色々と書いてきましたが、欧州でもFXビジネスのサイズはそれなりに大きくなってきていますので「利用者保護」の動きはかなり高まりを見せています。
そのた為、州市場でビジネスを行っているFX業者の場合には、信託保全についても一定の努力をしている会社があることは理解していただきたいと思います。
つまり、一定の条件をクリアしているFX業者ならば海外でも心配はないというのが結論になります。
ただ、できることならば納得の行く条件を満たした業者を選択して利用するのが、よりリスクを少なくする取引方法であることは間違いありません。
ホームページの見かけや、ボーナスなどのインセンティブだけにつられて取引をしないように心掛けたいものです。