英国のEU離脱が決定し、関心の的は、英国のEU離脱が世界経済にどのような影響を与えるのかに移っています。 リーマンショック級の危機が訪れる恐れがあるなんて声も聞かれます。 何故そのようなことが懸念されるかと言えば… 3つの大きな理由があるように思われます。 (1)英国に倣ってEUを離脱する国が続出するようなことになればEUが崩壊しかねない。 (2)英国には我が国の企業を含め多くの海外企業が進出しているが、EU離脱によってEU諸国向けの輸出に関税がかかるようになると、英国の輸出企業に多大な影響を及ぼす。 (3)ロンドンは欧州の金融センターの座を占めているが、EU離脱によってその地位が揺らぐ恐れがある。 ということで、もし、これら3つの理由が説得力を持つことが証明されるのであれば、英国のEU離脱が世界経済に深刻な影響を与えることが危惧されるのですが、逆にそれほど説得力を持たないということが証明されれば、それほど懸念する必要はないということになるのです。 先ず、今回の国民投票の結果を受け、他国が追随する可能性は大きいと言えるのでしょうか? というよりも、スコットランド自身が、英国がEUを離脱するなら英国から独立したいなんて言い出しているのだとか。 仮にそのようなことが現実のものとなれば、英国の政治的な安定性は大きく脅かされるでしょう。 しかし、仮にスコットランドが民主主義のルールに則って整然と国民投票を行い、そして、その結果スコットランドの独立が認められることになれば、それはそれで仕方がないことではないでしょうか。 いずれにしても、スコットランドが英国から独立したからと言っても、平和裏に推し進められるのであれば、世界経済に与える影響は微々たるものに留まるでしょう。 肝心の他の国が英国に倣ってEUを離脱する可能性ですが、それができるためには、相当の経済力を持った国でないと非常に困難だというべきでしょう。つまり、経常収支が慢性的に赤字であるような国は、むしろユーロ圏に属しておいた方がより多くのメリットが得られるということなのです。また、だからこそ事実上財政破綻したギリシャもユーロ圏に留まっているのです。 では、ドイツなどの経常収支が黒字の国はどうなのでしょうか? このような国は、本来であればEUから離脱しても支障なく経済を運営していけるのですが、しかし、ユーロ圏に属することによって、自国の経済力から判断したら過小評価されているとしか思えないユーロのメリットを享受することができるのです。簡単に言えば、ドイツは、安すぎるユーロの価値を利用して輸出を益々伸ばすことができるので、EUを離脱しようとは思わないだろう、と。 ということで、英国に倣ってEUを離脱する国が続出するとはとても思えません。 次に、英国がEUを離脱することによって新たな関税負担が発生することの影響を考えたいと思います。 もし、EU側が、離脱を決めた英国に対し懲罰的な意味で高率の関税を課すことになれば、海外から進出してきている企業を含め、英国の輸出産業に相当に影響を与える可能性があります。 しかし、もしそのようなことをすれば、EU諸国の英国向けの輸出にも高率の関税が課せられてしまうことになるので、双方にとって良い結果は産まないのです。 私は、これまでの経緯もあるので、英国及びEUの双方が大人の態度を取って、関税率は可能な限り低率なものに留めるようにするのではないかと想像します。 となれば、英国に進出している日本企業なども懸念するほどの影響を受けなくても済むでしょう。 三番目のロンドンの金融センターの地位が低下するということに関してはどう考えるべきでしょうか。 特段の対策を打たなければ、EU離脱によってロンドンの金融センターとしての地位が低下することは避けられないでしょう。つまり、相当の機能と人員がロンドンから去り、英国にとっては相当の痛手になると思われます。 しかし、仮にそうしたことが起きても、その分、ドイツやフランスやオランダなどがその肩代わりをすることになるので、全体としてみたらそれほど心配する必要はないかもしれないのです。 それに、どうしてもロンドンの金融センターとしての地位を維持したいと英国が願えば、今まで以上にタックスヘイブン的な役割を重視するようになるでしょうから、そのことから考えてもロンドンの金融産業が一気に衰退するとは考えられないのです。 ということで、私は、英国のEU離脱が世界経済に深刻な影響を与えるとは思いません。 米国の後押しもあり、殆どの関係者が大人の対応をすることにより影響は軽微なものに留まると思われます。 以上
英国がEUを離脱しても影響が軽微なものに留まる可能性
[紹介元] 小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! | Klug クルーク 英国がEUを離脱しても影響が軽微なものに留まる可能性